こんにちは!『ミライニナウ』運営者のミライマです!
未来担う世代の私達が今から考えておかなければいけないこと。
今回のテーマは『補聴器』です!
近い将来確実に到来する超高齢化社会。
高齢者が必ず直面するであろう難聴の問題。我々にとっても他人事ではありません。
特に今後はご家族の補聴器購入の検討をされる方も少なくないでしょう。
今回は補聴器について回るあの悪い噂についてです。
皆様の周りで補聴器を買った方、こんな声をよく聞くことがあるかと思います。
補聴器は聞こえない。
ガーガーうるさいだけ。
世の中これだけ技術が進歩しているのに、何故補聴器は高額のものを購入しても聞こえないのか?聞こえないという悪い噂が絶えないのか?
補聴器が聞こえない理由。その真相に迫ってみたいと思います。
※当記事は元補聴器メーカー・補聴器歴10年の筆者の、過去に500名を超える補聴器ユーザー様への販売、カウンセリング経験を元に考察していますが、医療機器である補聴器の使用については医療機関の判断が優先されます。あくまで補聴器購入の際の一つの参考資料としてご活用いただければ幸いです。
目次
補聴器が聞こえないのは何故?の結論→過度な期待感と思い込み・勘違い

まず初めに大前提としてお伝えしたいこと。それは昨今の補聴器はスマホやPCに匹敵するぐらいめざましい進歩を遂げているということ。
具体的な機能についていくつか挙げてみましょう。
最新の補聴器の機能
- 周りの音環境を常に超高速で分析して、なるべく聞きたくない音(ザワザワとした騒音・雑音など)は邪魔にならない程度まで自動的に音量を下げる
- 様々な周りの生活音の中で会話音をしっかり見つけ、 聞き取りやすいレベルまで音量を上げる
- 両方の補聴器が常に無線通信を行い音の方向感を分かりやすくしてくれる
- 補聴器からの音漏れ(ピーピー音・ハウリング)を見つけると瞬時に抑える
- スマホと繋がることで音楽や電話の会話音を直接補聴器から聞くことができる
メーカーや機種によって若干異なりますが、最新の補聴器は上記のような素晴らしい機能を搭載しており、『つけても全然聞こえない!』『うるさいだけだ!』ということは決してありません。
では何故こんなにも『聞こえない』という悪い噂が絶えないのか。
それは補聴器に対する過度な期待感や思い込み・勘違いによるところが大きいです。
では続いて補聴器が聞こえない!と訴えるユーザーの生の声について見ていきましょう。
補聴器が聞こえない!ユーザーの実際の声
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補聴器を買ったけどうるさくてしょうがないので数日使っただけで使用を辞めてしまった
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孫の結婚式のために補聴器を買ったけど全然聞こえなくて恥をかいた!
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父が補聴器を買ったが全然聞こえないので、私(息子)が試しにつけてみたらガーガーうるさいだけ。こんなもの聞こえるわけがない!
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普段はほとんど聞こえない祖母のために補聴器を購入したが、つけても全然会話が聞き取れない。高いお金を払ったのに損した。。
上記は筆者が実際に耳にしたユーザーの声です。これらの訴えには残念ながらどれも非常に重要な視点が抜け落ちてしまっています。
補聴器を購入する上で考えておきたい視点

以下の項目では補聴器を購入するにあたって必ず踏まえておきたいこと、新しい視点についてご紹介していきます。
補聴器の使用は耳のリハビリと考える
この視点はとても重要です。
例えばあなたが現役時代、地元では知らない人のいない有名なマラソン選手だったとします。
そんなあなたも今は高齢者。いざマラソンを再開しよう!と思った時、いきなりフルマラソンを完走できるでしょうか?
再び42.195kmを完走するためには何ヶ月もかけてトレーニングを繰り返し、感覚や体力を取り戻す必要があります。
上記の例は難聴と補聴器の関係にとても似ています。
難聴であるということは、長年にわたり身の回りの様々な音がとても小さく聞こえる、またはあまり良く聞こえていない状態が続いているということです。
つまり20年も30年もブランクのあるマラソン選手と同じだということです。
そんな状態の方が補聴器をつけていきなり全ての音を聞き取ることができるようになるでしょうか?
補聴器もマラソンと同様にある程度の期間をかけた装用トレーニングが必要です。
難聴を病気と考えるならリハビリと置き換えてもいいでしょう。
補聴器を使用し始めたばかりの頃は様々な違和感や不満足感、うるささなどを感じるので、1ヶ月、2ヶ月と使用を繰り返しながらご自身の感覚を取り戻していくリハビリを行うことが大切なのです。
補聴器を使用する目的を明確にし、限定する
こちらも一つの例を挙げてみます。
あなたはこれからテニスを始めようとしています。
憧れの選手は大坂なおみ選手。
早速スポーツショップで大坂なおみさんと同じモデルのラケットを購入しました!
よし!これで私も全米優勝だ!
…ちょっと大げさな例ではありますが、補聴器を購入された方の多くは少なからず上記の例のような思いを抱きます。
つまり、高価な補聴器を購入=すぐになんでも聞き取れる!という期待感と思い込みです。
テニス初心者のあなたが全米で優勝するためには何が必要でしょうか?
- テニススクールに通う
- 国内のアマチュア大会に出場し実績を積む
- プロテニスプレイヤーになる
- 世界大会で何度も負けを繰り返し経験を積む
これだけのことをやったとしても全米で優勝できるのはほんの一握りの選手だけです。
補聴器に置き換えると、使用者は
テニススクールに通う
(=販売店に通い調整とカウンセリングを継続的に受ける)
ことすら出来ていない状態で、
全米優勝
(=何でも聞き取ることができる)
できると思い込んでしまっているのです。全米で優勝するためにはまず地元の大会でしっかりと成績を収めることが必要です。
つまり、何でも聞き取れるようになるためには、まずは自宅での家族との会話が聞き取れるようになる、と言った小さな目標からスタートするべきなのです。
いきなり高い目標を設定しても絶対にうまくいきません。
補聴器使用者本人の能力を理解する
先ほどの項目で、どれだけ実績を積んだとしても全米で優勝できるのは一握りの選手だけ、という例を挙げさせていただきましたが、難聴と補聴器の関係にも共通する部分があります。
すなわち、本人の聞き取り能力の問題です。
専門用語では語音弁別脳とか語音明瞭度と言ったりしますが、言葉を言葉として理解できるかどうかの能力のことです。
極端な例を挙げるならば、語音弁別脳が低下している方は『あ』という単語を『う』と聞き取ってしまったりします。
言葉の理解度というのは耳に入ってくる音の大小では結果はそれほど変わりません。
つまり補聴器で音を大きく入れてあげたとしても『あ』という単語が『う』と聞こえてしまう問題は改善しない可能性が高いということです。
弁別能を維持できるかどうかは個人差が大きいため、年齢には比例しません。
90歳を超える方でも100%に近い弁別能を持つ方もいますので、補聴器購入時には医療機関や販売店で必ず聞き取り能力のチェックを受けることをおすすめします。
チェックを受けた結果弁別能の低下が見られる方は、残念ながら全米優勝(=全ての音を聞き取る)を狙うことは難しくなるため、なるべく低めの目標(1対1の会話の聞き取りを向上するなど)を設定し、過度な期待をせずに使用していくという心持ちが必要になります。
使用者本人の能力と限界をしっかり理解して適切な目標設定を行うことが、補聴器とうまく付き合っていくための極意、と言えるでしょう。
まとめ

今回は補聴器はつけても聞こえない!という悪い評判が流れてしまう理由について見てきました。
最後に内容を振り返ってみたいと思います。
- 補聴器が聞こえない理由は、使用者やご家族の補聴器に対する過度な期待感や思い込みによるところが大きい
- 補聴器自体は日進月歩で目覚ましい進化を遂げており、周囲の音環境を超高速で分析することにより適切な音を耳に届けてくれるようになってきている
- 補聴器の効果を得るためには一定期間の装用練習が必須。慣れるまでには様々な違和感や不快感が伴うと心得るべし。
- 補聴器をつけたとしてもいきなり全ての音を聞き取れるわけではない。まずは身近な悩みに注目し小さな目標設定を行うべし。
- 補聴器の効果の有無は使用者本人の聞き取り能力に大きく依存する。購入時にはしっかりと聞き取り能力のチェックを行い適切な目標設定を行うべし。
いかがでしたか?補聴器はつけても聞こえない!そのようなお話はよく耳にすると思いますが、聞こえない理由は今回ご説明してきたようなご本人やご家族の過度な期待感や思い込みによるケースが非常に多いです。
今回の記事がこれから補聴器の購入を検討される皆様のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。